とうとうシドニーを経つ日が来た。この日も悲しいほどお天気だった。
日本への帰国はヴェトナム航空で、ハノイで3時間のトランジットである。シドニー出発は11時過ぎ。朝ごはんは空港で食べることにした。
大きな二匹のワンコとのお別れ。大好きな彼らに「また会おうね」と話しかけながら、バフバフバフといっぱいいっぱいハグをする。朝から泣けてきてしまう。(ちなみに、そのワンコたち、娘が私を空港に送り届けてからの帰宅後、いつものようにドアから鼻を出して娘を迎えたのだが、娘の後ろに誰もいないと気づくと、まるで私を探しているようにウロウロと歩き回っていたよと娘が報告してくれた。ああ、泣けちゃう…)
空港までは娘が車で送ってくれた。渋滞に巻き込まれずに無事空港に到着。オンラインでチェックインを済ませていたが、荷物を預けるためにチェックインカウンターに行かなければならない。時間にゆとりをもって空港に来たのでカウンターはまだ空いていなかったが、既に多くの人が並んでいた。こういうところ、みんなすごいと思ってしまう。一体、この人たちは何時間前から空港にいるのだ?
そうこうするうちに、カウンターが開き列が進んでいく。娘も私と一緒に並んでいたのだが、私たちの前に並んでいる老夫婦たちが娘に何やら話しかけている。なんでも、チリから来た昔ながらの友人夫婦とヴェトナムを旅行するのだという。友人たちは昨日チリからシドニーに着いたばかりで、うちに一泊してから今日ヴェトナムに向かうんだ、とかいうことを、とても楽しそうに話していた。チリから南半球を渡ってシドニーに到着し、たった一泊しただけでまた海外旅行に行くとは。なんともスタミナのある高齢者たちである。思うに、やはり人種によってスタミナの所有量が違う気がする。私の周りの日本人高齢者でにはこんなにフットワークが軽い人たちはいない。立ち話をしたおじいちゃん、おばあちゃんたち、年齢はとうに70歳を超えているであろう人たちだったが、私もその年齢になってもバンバン海外に出かけたいものである。
チェックインカウンタースタッフの女性のなかで、一人、とってもテキパキと仕事をこなしている人がいた。年齢は私と同じぐらいか。声も大きくて、はい、次!という感じで、今、自分が遂行すべき業務をばっさばっさとなぎ倒すというような気持のいい働きっぷりだった。果たして、私はその人に対応してもらうことになった。元気よく”Good morning!”とあいさつしてくれて、こちらも元気よく応えながらパスポートを出すと”Oh! Japanese passport!! Perfect!! Great!!”と歓喜の声。そして「日本のパスポートは面倒がなくていいのよね~」と言っていた。どうも日本のパスポートは手間をとらせない、チェックインカウンターで働く人にとっては神パスポートらしい。確かに日本のパスポートは世界最強であると聞いたことがある。ビザ無しで渡航できる国が一番多いのだ。2025年現在で190か国以上、つまり思い立ったらいつでも世界中に行ける自由度が高いのである。理由として、海外において日本人による犯罪率が低い、敵対国が少なく外交関係が安定している、経済的に安定していてほとんどの日本人は帰国するため不法滞在が少ない、などの理由で各国が「日本人は信頼できる」と判断しビザ免除を認めやすいのである。海外旅行好きな日本人にとっては、まさに鬼に金棒だ。
その女性はてきぱきと私の荷物を預かってくれ、そして私のピアスを見て「ところで、そのピアスとっても素敵ね!ピーコックの羽をかたどってるの?I love it!!」とほめてくれた。その日、私はWahroongaで買ったクジャクの羽をかたどったデザインのピアスをしていた。”Thank you! I love it too!!”と思わず口からこぼれ出た。そのやりとりを見ていた娘が「あのスタッフ、まみーのことすっごく大好きって感じだったね~」と言ってくれた。こういう何気ないやりとり、本当に楽しくて嬉しいものである。
スーツケースを預けて身軽になり、お腹も空いた、何を食べようかと空港内のフードコートをぶらぶらする。そこで私は、白人男性が食べていた、大きなブロッコリーがゴロンゴロンと入り、レタスやらキヌアのようなものと一緒にミックスしてあるカップに目が釘付けになった。カップサラダか?なんだか、美味しそう。。すると娘も「ねぇ、まみー、見た?あのブロッコリー。美味しそうだったよ」と言うではないか。やはり母子である。見るものも、食指が動くのも同じなのである。
そのカップサラダをシェアすることにして、娘はリコッタスピナッチロール、私はミートパイを頼んだ。ブロッコリーサラダは食べ応え満点であった。フレンチドレッシングと相まって、どんどん食べ進んでしまう。ミートパイはオーストラリア、そしてイギリスでのファストフードである。シドニーに住んでいたころ、仕事帰りに小腹がすくとよく駅の売店で買って食べていた。今回の旅行では初めて食べたがパイ生地がサクッとして、スタッフィングも濃厚で美味しかった。なんでもない空港のフードコートでも食事が美味しいシドニーなのである。
そう、今回のシドニー滞在でも思ったが、シドニーは食事が美味しい。「オーストラリアの食べ物ってなに?オーストラリア人って何食べてるの?」という人が多いが、ここまでコスモポリタンになっていると、もう、いろんなものがオーストラリアンフードなのである。どの国の食事も食べられて、しかも美味しい。これは断言できる。日本もいろいろな国の食事が楽しめるのだが、海外の人たちからすると、居酒屋天国である。ちょっと気軽にフレンチ、ペルシャ料理とはいかない。日本で居酒屋以外での食事を楽しむとなると、検索をかけて探さなくては、というイメージがある。反面、シドニーは気軽に世界中の美味しい料理が楽しめるのである。
食事を済ませてからお土産屋さんをぶらぶらして母へお土産を買う。そうえいばシドニーのマグネットを買っていないということに気づき、ボトルオープナーのついたオーストラリアの国旗が描いてあるマグネットも一緒に購入。海外に行ったときには思い出としてマグネットを買うようにしている。私の冷蔵庫の扉が海外のマグネットたちに埋め尽くされる日が来るのを願って。
搭乗時間が近づいてきたので、搭乗口へ向かう。娘とたくさんたくさんハグ、キスをして涙のお別れである。でも、娘は来月日本に帰って来るので、またすぐに会える。本当に本当にありがとうね。まみーは貴女にいろいろな意味で感謝でいっぱいだよ。
シドニーで過ごした時間をどう言葉にしたらいいのかいまだに見つからない。感動し、驚き、考え、さまざまな感情を味わい、ただ心が満たされて涙が出そうになるほどの幸せをずっと感じていた。
娘のボーイフレンドとのようやくの出会い。二匹の大きくて可愛いワンコとの出会い、娘のワンコとの再会。友人との再会。これらの出来事はこれからの未来に繋がっている。
シドニーで娘と一緒に笑いあった瞬間、同じ景色を観て、同じ時間を感じられたことは、私の人生の大きな宝物の一つとなった。
これからも人生の宝物を増やしていこう。
ということで、年末年始はプーケットで過ごすことにした。2026年元旦に娘とプーケットで合流だ。寒い日本を飛び出して避寒地へ行くのだ。生まれて初めて、海外で一人で年越しをする。何かがリセットされる気がする。何歳になっても初体験を楽しもう。考えるとウキウキワクワクが止まらない。この楽しみが待ち構えているので、忙しい師走も難なく乗り越えられそうである。
気が付けばプーケット行きはもう来月に迫っている。


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